陣痛のような腰痛で目が覚め、「あ。子供!」と起きる。体が、何かを外に出したがっているような感覚だけれど、こんな時期にこんな体感があるなんて。出血はしていないけれど、つわりもまだバリバリあるけれど、あまりにも嫌な感覚。
病院に行くと、やはり、というかなんというか、胎児の心拍は確認できず。
残念ですが、死亡していますね、とのこと。大きくなっているので、数日前までは脈打っていた可能性が高いとか。ああ。やはり。そうだったか。突然腰が痛くなったのが3日ほど前ではないか。
さすがに今朝のように痛いと危機感もつのるけれど。


人間の、自分の体の中の、見えないものを察知する能力ってすごいものだなあ、と妙に感心する。察知したところで、何が変わるわけではないのだけれど。


おなかの中で他の人間が一人生きている、というのも奇妙な気分なものだけれど、おなかの中で他の人間が一人死んでいる、というのもとてつもなく奇妙なもので、呆然と渋谷駅に降り立って、呆然と特大のミントチョコレートアイスクリームを食べる。と、「まいったなあ」という気分。悲しいというよりも、なんというよりも、ああ、もう、とにかくまいったなあ、という感じ。
しかし、自分のとにかく「頭が白紙」状態はともかく、顔のほうは、きちんと反応してどうやらぽろぽろないていたらしく、とてつもなく困った顔をしただんなに頭をなでられる。思わず一瞬、私より彼のほうが傷ついているのではないか、と思い、どうやって慰めようか画策してしまう。


手術をするか、自然流産をするかの決断を任されて、空っぽの頭で考える。

ちなみに、いずれにしても体験するだろう肉体的な苦痛は、今までの経験から大体想像がつき、そちらもかなり「なんだかなー」と思いつつ。しかし、こればかりは神様の領域だ。嘆息しつつ、あちらこちらにかけてしまうご迷惑に頭を下げるしかない。