早稲田英文学会刊の『英文学』からウルフ関係の論文を2本読む。奇しくも両方ともウルフとエッセイという題材だ。

内田夕津『ブックマン』におけるウルフの「小説の位相」
「小説の位相」を雑誌『ブックマン』の中での位置づけから読んでいく。読んでいく・・・というよりは、その前段階の「いったいどのように」「どのような位置づけで出版されたのか」を検証していく、というほうが正確か。面白く読む。
ウルフはウルフキャノンの中でのみ読むべし、と考えれば、「小説の位相」は確かに「ウルフの小説観」をあらわすだけの役割しかしないのだが、このように『ブックマン』内のシリーズの一部であった、という捉え方をすれば確かに新しい見方ができるかもしれない。特にニュー・ヒューマニズムとの関係など。決して賛同していないポジションに結果として荷担することになったという結論が面白い。

Erika Yoshida, 'Virginia Woolf's "Craftsmanship" in Context: The BBC, the Mass Audience and Woolf'
これの前身にあたる発表を確か聞いていたのではないかと思う。ウルフのエッセイ"Craftmanship"をラジオ放送というメディアの側面から読んでいく。特にプロパガンダに対するウルフの苛立ち、出版されたエッセイとラジオで放送されたトランスクリプトの違いなど。