日本映画

日本映画史100年 (集英社新書)

日本映画史100年 (集英社新書)

読了。特に活弁に、より伝統的な日本の舞台芸術との連続性を見る部分が面白かった。なるほど、と納得させられる。日本における吹き替えに対する字幕の優位に漫画との連続性を見るあたりは、さすがに『漫画原論 (ちくま学芸文庫)』の著者という感じがあるが、では、現代における字幕の優位性と、映画初期における字幕の劣位をどう処理するのか、少々気にかかる。
漫画原論 (ちくま学芸文庫)

漫画原論 (ちくま学芸文庫)

漫画は『夏目友人帳』。白泉社の漫画がどうもこのところピンと来なくなっていたのでようやくほっとする。少女漫画が読めない体質になっていたらどうしよう、と実はひそかに心配したのであった。『蟲師』といい、『もっけ』といい、『百鬼夜行抄』といい、『雨柳堂夢咄』といい、ここのところ、日本の妖怪変化物が増えているような感覚があるのだけれど、これは『三丁目の夕日』に見るような日本に対するノスタルジアとかかわりがあるのかしらん、と妙に気になる。*1水木しげるなどとちがってさらっとしているし、土着の怨念のようなもののない描き方がされているのが特徴。むしろ、「一時期猛威を振るった恐ろしいもの」が、すでに「たそがれを迎え消えつつある」が、「まだ人の人生を左右しうる」といった位置づけ。しかし、こういうのを読んでいると杉浦日向子の江戸短編集『百物語 (新潮文庫)』は実は非常に影響力が大きかったのではないか、と突然思ったりもする。もっとも『となりのトトロ [DVD]』なのかも、という気も。*2
百物語 (新潮文庫)

それにしても、日本のポピュラーカルチャーにおける日本の歴史と外国って一度、じっくり見てみると面白いのではないか、と思う。論文を書くためではなく、単に好奇心から。『キャンディ・キャンディ』ではロンドンにコヨーテが出るし、*3息子に付き合ってしつこくみる『アルプスの少女ハイジ』ではスイスにトカゲが出るし。*4と思えば『李朝・暗行記 (潮漫画文庫)』のように、やたら時代考証にこだわっていそうな作品もあるし、*5ていうか、誰か、やってみて?お隣の中国をあそこまでファンタスティックに描いて見せた『らんま1/2』のような大ヒット作品の存在ってすごーく気になるんだけれど。ねえ、『らんま』って、どのように中国語受容されているのでしょう?

*1:で、ここらのノスタルジアには浦沢直樹が今二重に噛付いているんだけれど、なんというかねー。引張りが上手で読まされてはしまうものの、成功しているのかなんなのか…

*2:もちろん両方とも、「日本の過去」を「一見忠実に」しかし「現代の欲望を交えながら」再構築した、という意味ではノスタルジックだし、実は同根なのかもしれないけれど。

*3:出ませんから。アメリカのものですから、あれは。

*4:確証は持てないが、出ない、気がする。少なくともイギリスで見たことはないし、短いスイス滞在でも見たことはない。

*5:もっとも韓国文化と歴史については今ひとつ自信がもてないのでこれも又聞きに過ぎないけれど