アーサー王物語

二つの意味で個人的に思い入れのある書籍を読み返している。幼い頃、非常に読みたかったのだけれどなぜか読む機会がなかった本。本には出会った時期がとても大きく意味を持つものがあって、アーサー王物語は確実に早い時期に親しむべき物語の一つのように思われる。ナルニアシリーズも、なぜか地元の書店にも図書館にもなく、手にして読んだのが高校生だった事を私はかなり残念に思っている。
もう一つ悔やまれるのはようやく手にした非常に美しい装丁のこの本を日本を離れるときPDFに変えなければならなかったということ。2004−2007年出版だからさして古いものではないのに、今では絶版のようで古書として大変な値段がついているシリーズ。ビアズレーの挿絵500点を含んだこの5冊をそのままの形で手元に置いておけなかったのはとても悲しいことだ。

アーサー王物語における性の感覚は確実に現代のものとも、ヴィクトリア朝のものともかけ離れていて、わかっていても読み返していて驚く。一つ一つの騎士たちの冒険や物語は非常に短いので隙間時間にちょこちょこと読み続けているのだが、三角関係、美しい乙女たち、気高い騎士たちといったモチーフが繰り返され、繰り返しの中に緩やかに全体像が浮き上がってくるので案外こうした読み方に向いた物語ではある。前回はまったく気づかなかったのだが、今回はケイ卿の嫌な奴っぷりが印象的。

ちなみにアーサー、と言う名前は、今の耳にはそのままではかなり古くさく聞こえる。(ArtieであるとかArtであるとかいう愛称になると別だけれど)
The Baby Name Wizardというサイトがあってアメリカに於ける名前の人気の趨勢を教えてくれるのだけれど、それによるとピークは1880年代。グラフを見ると感覚がつかめるのではないかと思う。


アーサー王物語〈1〉

アーサー王物語〈1〉